ラヴェル 2枚組
disc 1
①ソナチネ
②優雅にして感傷的なワルツ
③クープランの墓
④夜のガスパール
disc 2
⑤前奏曲
⑥ハイドンの名によるメヌエット
⑦ボロディン風に
⑧古風なメヌエット
⑨亡き王女のためのパヴァーヌ
⑩シャブリエ風に
⑪鏡
⑫水の戯れ
⑬マ・メール・ロワ
パスカル・ロジェ(ピアノ)
デニス・フランソワ・ロジェ(ピアノ)⑬
録音:1973年, 1974年
ロジェの演奏はフランソワのように独特な世界を作り出してみせるわけでもないし、アルゲリッチのような情熱も、ポリーニのような美しいテクニックも感じられません。漠とした印象しか持たないリスナーもいると思います。たしかに決してインパクトの強い演奏ではありません。ただ、そうした上で思うのは、ラヴェルのピアノ曲はこれでいいのではないかということです。ロジェ自身が言っているように、この演奏にはいかにもラヴェルらしい淡いロマンチシズムが感じられるからです。ロジェの演奏にはいい意味での「ゆるさ」があります。そしてそれはラヴェルのピアノ曲の味であるような気がするのです。管弦楽曲においてもドイツ的なオーケストラによる力強い構築性のある音作りが、ラヴェルの世界と相容れないことはよく指摘されることでもあり、聴いていて違和感を覚える人も多いようです。ラヴェルの楽曲は形式的に自由で、表現の振幅も大きく、ゆえに独特な色彩感があります。そうした特殊性を知悉しているフランスのオーケストラの演奏では色彩感に富んだ魅力的な楽曲に聴こえますが、ドイツのオーケストラだと不協和音が連続するぎくしゃくした現代音楽のように聞こえたりします。このピアノ曲でもそれは同じです。もしこれらを、聴いているだけで楽譜が浮かんでくるような明晰なテクニックで弾いていたら――と考えると、それこそがロジェが否定しているところの「ハートよりも頭脳から生まれたといわれる」というラヴェルのイメージになったのだろうと思います。サティやドビュッシーなどと並ぶ、淡いフランス流のロマンチシズムは、強い完全主義の前に儚く消えてしまう、しかしだからこそ美しいのだと思います。ロジェのゆるい演奏をゆったりとお楽しみください。
国内盤、帯綺麗に貼り付け、盤面傷無し
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