1994年の作品。
カーティス・メイフィールドは、その音楽のみならず、米国の黒人ミュージシャンの政治意識に多大な影響を与えた偉大なアーチストでした。
若干14歳で参加したインプレッションズを手始めに、ソウル・ミュージック界において最初に黒人の市民権をテーマとして積極的に取り上げ、それはスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイなどの後進の黒人ミュージシャンだけでなく、すべてのミュージシャンに影響を与えました。
今作は、彼が亡くなる5年前に発表されたトリビュート・アルバムですが、参加ミュージシャンの名前を見るだけで、その影響力の大きさがわかり、今現在の彼への評価が過小評価だと思えます。
『Billy Jack』ではレニー・クラヴィッツが抑制されたファルセット・ボーカルを、『(Don't Worry) If There's a Hell Below, We're All Going to Go』ではナラダ・マイケル・ウォルデンがダイナミックで攻撃的なグルーヴを聴かせてくれ、それらはすべてカーティスのスタイルの模倣を通した敬意の念が伝わってきます。
ブルース・スプリングスティーンは『Gypsy Woman』でインプレッションズ初期の名作で静かな迫力あるボーカルを披露すれば、スティーヴィー・ワンダーは"リトル"スティーヴィー・ワンダー時代に帰ったかのように、歌い方を少し変えているのも面白いです。
『I'm So Proud』で甘いファルセットを聴かせるのは、キャリアも長い円熟の味、アイズレー・ブラザーズ。今作のベスト・トラックかもしれません。
3曲目の『Let's Do It Again』は、1975年のシドニー・ポワチエ主演の同名映画の挿入歌で、ステイプル・シンガーズの歌唱により、全米チャート1位になりましたが、今作ではカーティス自らがRepercussionsと一緒に参加しています。
そして、再編成されたインプレッションズとジャジーな雰囲気を醸し出して『Fool for You』を演奏するのは、ジャズ・サックス奏者のブランフォード・マルサリスです。
新旧の、ジャンルを超えたミュージシャンが、その個性を余すことなく発揮し、偉大なる先輩に捧げた佳品です。
ドイツ輸入盤のため、日本語関係の資料はありません。
美品です。