ENESCO PLAYS BACH SONATAS / GEORGES ENESCO ジョルジェ・エネスコ CCD104/5
盤面:104 光にかざすと極薄いスレありますが、再生問題なし。 105 104より綺麗。美盤、再生問題なし。
ジャケット: ケースの2点凸の跡あり。全体的に中古並レベル
ケース: 表面擦れ・使用感あり。中古並レベル
中野雄氏監修の「クラシック名盤 この1枚」(光文社)という本のなかで、エネスコのバッハ無伴奏についての記事があります。
この演奏、コンチネンタルというアメリカのマイナーレーベルからLPで発売された箱入りの初期盤は、中古市場で数百万円の
値がついているそうです。ただ、既に何度か「板おこし」の方法でCD化されたものの復刻の状態はうまくいっていないようで
前述の本では唯一「La Voce - Ton Rede CCD104/5」という盤がオリジナルの95点のできばえと評価されています。
たとえばフィリップス盤は今も現役なので比較的容易に入手することができますが、板おこしの失敗作のひとつなのでしょう。
<曲目>
J.S.バッハ : 無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)
<演奏>
ジョルジュ・エネスコ
(録音:1948年、49年 ニューヨーク CONTINENTAL原盤)
エネスコのバッハは、基本的にインテンポでオーバーな表現は皆無です。
技術的にはさすがに年齢的な衰えが見え始めており、音程もあやしい部分が散見されます。
最初に聴いたときは、この部分がやはり気になるのですが、何度か聴いているうちに、パーツパーツに
とらわれず全体の見通しが素晴らしいことが分かりはじめ、どんなフレーズもおろそかにしない真摯さが
聴き手にひしひしと伝わってきます。
もっとも感動したのは、やはりパルティータ第2番の終曲シャコンヌです。
この曲は変奏曲として古今最高の作品ですが、エネスコの演奏ではオスティナートバスの扱い・アクセントの
使い方が素晴らしく、ポリフォニックな部分が見事に再現されています。
第一の難所である前半の長大なスケールでは、下降フレーズの部分で一音一音楔を打ち込むような表現が印象に
残りました。つづくレガートな表現との対比も見事。
また、中間部から再び転調する部分にかけて聴かせてくれる静謐感と美しさには、ただただ感動です。
シャコンヌ全体から醸しだされるこの「気品」は、やはり別格のものですね。
もう1曲あげると、ソナタ第3番のフーガです。
10分以上かかる大変な難曲ですから、どうしても技術的な衰えや音程の不安定さが目立ってしまいます。
しかし、音楽の最も高いところを常に見据えながら「私はこう弾くんだ。私のバッハはこうなんだ」ということを
どんなときでも感じさせてくれます。
聴いているうちに、エネスコの音楽に奉仕するひたむきな姿に何度も涙がでそうになりました。
この真摯さ、気品こそがエネスコの何よりの魅力なんですね。
ただ不思議なことに、真摯なんですがストイックさをあまり感じさせません。
この点が、晩年のシゲティ等と異なるような気がします。
人間的な優しさというか、ある種の人懐っこさもエネスコ特有の魅力なのかもしれません。
クラシック/Bach, Johann Sebastian バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲 エネスコ (2CD) CD