アーティストについて

コリーヌ・ベイリー・レイは、西インド諸島出身の父親とヨークシャー出身の母親を持つ3人姉妹の長女としてリーズで生まれ育った。少女時代はバイオリンを習い、かなりのレベルまで上達したというが、その腕前をさらに磨こうとする意欲は、ツェッペリンに憧れを抱いた時点で消え失せた。15歳になる頃には、ヴェルーカ・ソルトやL7など女性が率いるバンドにも夢中になっていた彼女は、自分のバンドを結成したいと思うようになる。そして誕生したのがHelenだった。

Helenというバンド名について突っ込もうとすると、コリーヌは自分を弁護するように言った。「知りたい気持ちはわかるけど、うまく答えられないわ。15歳の私たちにとって、Helenの結成は生意気で大人なことに思えたの。賢いことだと思っていたわ」。そして、「確かに今はそう思えないけど」と言葉を足した。

さえないバンド名ながら、Helenは地元でかなりの注目を集めるようになっていった。あらゆるギター中毒バンドを多数擁するロードランナー・レコーズから契約の話を持ちかけられるなど、全てがうまく行っていたが、ベーシストの妊娠が原因でバンドは崩壊した。

「がっかりしたかって? まるで抜け殻だったわ。それから先、何をしたらいいのかわからなかった」とコリーヌはその時の様子を振り返る。

そこで彼女はリーズ大学に進学。英文学を学びながら、夜は地元のジャズ・クラブでクローク係として働くようになった。バンドをバックに歌わせてもらうこともあり、そうした体験を重ねていくうちに、新たな想いが芽生えていく。ソロの楽曲を書きためるようになった彼女のサウンドは、インディーズロックからソウルへとシフトしていった。そしてついに2004年春、EMIと契約を交わすに至る。バンド活動を始めて以来、10年に渡って経験を積んできた彼女は、自分の要望も、それを通す方法もはっきりわかるまでになっていた。

「ジャズは好きだけど、熱狂的にはなれない。即興に馴染めないの。それが純粋でシンプルなクラッシク音楽が好きな理由よ。自分で書く時も、短くて、スウィートで、的を射た内容の曲を目指したわ。聴き手をうんざりさせるより、もっと聴きたいと思ってもらえるようにね」

こうして、ビョークやマッシヴ・アタックからジル・スコットまであらゆるアーティストに影響を受けたコリーヌはようやくスタジオに入り、デビューアルバムを完成させた。彼女は自身の作品を、「チル・アウト、アコースティック、クレイジー、ムーディー、ソウルフル等々さまざまなテイストが楽しめるアルバムよ。それと、これはとてもオーガニックな場所で作られた作品なの。みんなに言いふらしたいけど、気取っていると思われそうだからやめておくわ」

コリーヌは、最高のソウルソングに不可欠なテーマである「愛」を描く時も、ピンクでフワフワしたイメージより、その複雑さや乗り越えなければならない困難に焦点をあてる。「人があまり語ろうとしない人間関係の真実に興味があるの。愛は願望と現実の対立を前提に存在するものだとかね」