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内容紹介

異国の歌でありながら私たち日本人にも懐かしさを感じさせ、望郷の思いを募らせるイギリスの歌の数々。「埴生の宿」や「グリーン・スリーヴス」に代表されるイギリス抒情歌曲の幅広く多彩な世界は、辻裕久の柔らかく透明な声と、なかにしあかねの詩のようなピアノによって彩りと温かみを帯び、懐かしい過去の記憶をやさしく呼び覚ます。日本が失った無数の故郷への想いとともに福島市音楽堂に響くメロディーは、いま、未来に向けて送り出された。

録音:福島市立音楽堂 2012年4月5-7日

total playing time: 67'00''

《レコード芸術2012年11月号準特選盤》

メディア掲載レビューほか

近年ことに声が安定してきた枯れ、強弱の繊細な下限でメロディをどれも丁寧に唄い上げるが、特にヴォーン=ウィリアムズ〈オルフェウスと竪琴〉の明るく表情豊かな高音域、ロジャー・クィルター〈泣くな 悲しみの泉よ〉での淡い哀感や〈ただあなたの瞳から〉や〈春の日と花と輝く〉での郷愁誘うシンプルなフレージング、なかにしあかねの活力あるピアノが支える〈陽気な粉ひき〉での快活な歌いぶりなど好感触。アイヴァー・ガーニーの〈春〉も郭公の囀りを交えた弾けた旋律線を爽やかに歌いあげて印象深い。歌曲ファンに新境地を拓く一枚として勧めたい。 --岸純信氏(音楽現代/2012年11月号)

辻は英国歌曲をライフワークとするエキスパート。実に丁寧な歌い口だ。時に過度とさえ感じるディテールへのこだわりは彼が合唱の指導者としても活躍していることと無関係ではないと思うが、それが決して押し付けがましく聴こえないのは、ナチュラルな声の響きゆえだろう。歌の流れを阻害するものは何もない。曲の配置もうまい。聴き進むに連れて(曲順通りに録っているわけではないだろうけれど)声の調子も上がってくるような気さえして、ぐいぐい引き込まれる。残りトラックが少なくなっていくのを口惜しく思えるディスクに出会えるのは幸せなことだ。 --宮本明氏(ぶらあぼ/2012年12月号)

辻裕久&なかにしあかねお得意のイギリス歌曲のCDが久々にリリースされた。パリーやエルガー、ホルスと、クィルター、ガーニー、ウォーロックなどの作品が収録され、期待にたがわぬ演奏になっている。

辻裕久の歌いぶりはますます練れてきて、アーティキュレーションは自由自在。それが単に洗練されたテクニックにとどまらず、歌い手の声質の十全な発揮に役だっている。辻裕久の声は独特のフィジカルな粘り気をおび、曲によってはイギリス人以上にイギリスの風土や情景を生み出すのに打ってつけだ。
(略)
今回のなかにしあかねのピアノもすばらしい。一音一音に慈しみがこもり、まるで言葉で訴えてくるかのよう。

--喜多尾道冬(レコード芸術/2012年11月号)