音楽形式とは何か。ソナタ形式とは何か。当時の人々にどう理解されていたか。--本書は19世紀に「ソナタ形式」と呼ばれるようになった西洋近代で最も重要な音楽形式について、18〜19世紀の理論や美学的記述を再読することによって、当時の基本的教養であった修辞学の観点から再考し、それが現代における古典派音楽の理解にどう寄与するかを問う。「修辞学(対象や考え、あるいは情緒を聴き手にとって説得力のあるものにする技術)はこの時期のあらゆる芸術に枠組みを提供しており、音楽との対応関係はとりわけ密接なものでした。(中略)楽想が導入され、労作され、強化される順序は、弁論の構造と明確に対応していました。18〜初期19世紀の作曲家たちや理論家たちはこのことを認識し、この考え方について詳細に説明し、音楽の諸形式と雄弁術の諸形式との対応関係を主張したのです。(著者による「日本語版への緒言」より)日本語版への緒言序 章 音楽形式とメタファー第1章 音楽形式のパラドックス 形式の生成論と規範論 ソナタ形式と定義の限界 第2章 修辞学と18世紀における音楽形式の概念 修辞学と18世紀美学の実践的傾向 言語としての音楽 音楽の文法と音楽の修辞学 修辞学と作曲プロセスの理論 旋律と形式の主題的基盤 ジャンル、形式的慣習、個人的才能第3章 19世紀以降の形式メタファーにおける継続と変化 19世紀における修辞学的比喩の継続 有機体のメタファーと音楽形式のパラドックスの出現 三つの事例研究:レイシャ、マルクス、シェーンベルク 第4章 修辞学と器楽の自律性 修辞学と「楽想」 修辞学と18世紀後期・19世紀初期の分析第5章 修辞学と大規模形式の分析における聴き手の役割 聴き手志向の形式理論 プロットを聴く:形式的原型の修辞学 音楽的弁論の分析:ハイドンの交響曲 第46番 ロ長調の第1楽章 訳者による付論「本書の理解のために」訳者後書き文献表索引