書を芸術の域に高め、1600年以上書聖として崇められてきた王羲之の実像とアルカイックな書の魅力を3章構成〈王羲之の生涯/王羲之の書を味わう/王羲之以降〉で解き明かし、王羲之信仰の全貌に迫った意欲的な入門書である。豊富な逸話と夥しい書簡から浮かぶ人間像、生きた時代といった一般的関心事と名品の鑑賞だけでなく、羲之書を軸に、王羲之神話の形成と崩壊を含む中国書史の流れや日本への影響など東アジアの書道史までも一望できる内容。最高傑作として名高い「蘭亭序」は、信奉者たちのエピソードや、魅力の分析、工芸品の意匠としての展開などさまざまな角度から紹介する。