RCA盤・RVC-1535(M)
ベートーヴェン 交響曲 第5番ハ短調 作品67「運命」
シューベルト 交響曲第8番ロ短調「未完成」
アルトゥーロ・トスカニー二指揮
NBC交響楽団
トスカニーニとNBC交響楽団による名演奏
トスカニーニは、1867年イタリアのパルマの貧民街に生まれた。幼少の頃より音楽的な才能を示し、パルマ王立音楽院に入学したが、この学校は専門を自分で選ぶことが出来ず、ピアノを希望していたトスカニーニの意志に反して、チェ口を学ぶように決められてしまった。しかし、いずれにしても音楽が好きでたまらなかった彼は人一倍熱心に勉強したので、チェリストとしての腕前はぐんぐん上がり、18才の時にはこの楽器一本で立派に生活できるようになった。ところが初めから一介のチェリストとして終るような人物ではなかったから、音楽のあらゆる面について勉学にはげみ、その実力が広く知られるようになったのである。
■ベートーヴェン:交響曲 第5番ハ短調 作品67「運命」
「私の音楽は私の心から生まれたものだ。願わくば再び聴く人の心に帰ってゆくことを」とベートーヴェンは書いている。あまりにも凝縮の限りをつくされ、一切の無駄が省かれているために聴衆に並はずれた緊張感を強要するこの第5交響曲、それ故に「エロイカ」や「第9」のひろびろとした世界の方を好む人も多いが、第1楽章冒頭のテーマを全4楽章に張りめぐらし、有機的な統一へ持っていったベートーヴェンの建築にはただただおどろくほかはない。<運命を克服して歓喜に至る>という彼の根本思想がこれほど明確な形をとって実現された例も珍しいし、この第1楽章はあまりにも結晶化されつくした作曲法にオーケストラの能力が追いつけず、なかなか名演奏に接する機会にめぐまれないが、ここにトスカニーニが人間業を絶した名演を聴かせてくれるのは何と幸福なことだろう。
■シューベルト:交響曲 第8番 ロ短調「未完成」
「未完成交響曲」に対する評価は人によってかなりの差があるようだ。古今のシンフォニーの中でも指折りの傑作とする者から、旋律とハーモニーの魅力だけがすべてで深い精神性に乏しいとする者までいろいろある。しかしそうした意見をすべて認めた上で、やはりこれは愛すべき名曲なのだ。
楽しんで聴いていただける商品です。ジャケットに歴史を感じさせるそれなりの痛みはあります。