細野晴臣popeye webより
「ホラーの名作がたくさん出てきたのは’70 年代だったと思います。その時代の映画でいちばん怖かったのは『赤い影』。いまだにいちばん怖い映画かもしれない。リアルタイムで観たのか覚えてないけど、監督のニコラス・ローグが音楽的な作品をいろいろ作っていたので、興味があって観に行ったら本物のホラーだった。しかも怖いだけでなく、すごく美しい。
ざっくりあらすじを言うと、水の事故で娘を亡くしたイギリス人の夫婦が、傷心のままヴェニスに向かうんです。夫は建築家で、ヴェニスにある教会の修復依頼を受けたんですね。ところがヴェニスに行くと、赤いレインコートを着た女の子の後ろ姿を、何度か見かけては見失う。実は娘が亡くなったときに着ていたのが赤いレインコートなんです。そして幻覚なのか、夫が自分の葬儀船に乗る妻の姿を見たり、盲目の老女が彼らに忠告を与えたりする。
観る人によっては、どこが怖いのかという映画かもしれません。でもすべてが予兆に満ちていて、最後の瞬間に恐ろしいことが起こる。その最後のシーンにズキーン、ドキーンとして、あ、これは二度と観られない映画だと思った。何度も観たけどね、その後(笑)。あとで調べたら、『赤い影』の原作を書いた小説家のダフネ・デュ・モーリアは、ヒッチコックの『鳥』や『レベッカ』の原作者でもあるんです。全部好きな作品だから驚きました。彼女の小説には映画作家を惹きつけるものがあるんだろうね。」
「赤い影('73英/伊)」
ジュリー・クリスティ / ドナルド・サザーランド / ニコラス・ローグ
定価: ¥ 1,885
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考古学者のジョンと妻のローラはヴェネチアで盲目の霊媒師に出会い水死した娘の幻につきまとわれる。水の都を舞台に映像派として知られるニコラス・ローグが官能的に描くオカルト・サスペンス。