モーツァルト:ピアノ協奏曲20番　聞き比べ「 ゼルキン(P)　アバド指揮」

・セル指揮のＣＢＳ盤の方がテクニック的にもゼルキン本来の集中力も上でしょう。しかしＤＧに移ってからのゼルキンのピアニズムは、モーツアルトが書き残した音符、和音一つ一つを慈しむように弾く。それにアバド指揮のオーケストラがぴったり寄り添い、時には引き締め、時には柔らかく応じる。ぎこちない演奏と思う向きもあろうが、その至純性は比類がない。録音も優秀で、ゼルキンの鼻息、うなり声も時には聞こえ、ライブ録音を聞いているような気がすることもある。モーツアルト唯二の短調の協奏曲。必ず聴いて欲しいものです ・それにしてもモーツァルトの音楽の不思議さには驚くばかりで、自分がどのような感情でいようと、どこかの部分で必ず波長が合う感じがあります。音楽に全面的に浸るほど余裕がない情緒のなかでも、モーツァルトの楽曲の純白の光の中からは、自然に私のそのときの気持ちの色あいが分光されてくるかのように思えます。 　K.466を最初に聴いたのは独奏者ルドルフ・ゼルキンで、アバド指揮ロンドン交響楽団によるものでした。私に最初に与えらえた印象は、冬の潔い冷たさに似つかわしい、やや褪めた青い響きでした。安易な感情移入を許さない、厳粛さを感じました。 ・名曲名盤などの本を見ても、この盤が入っているのを見たことがない。しかし、何十年、この曲の聞き比べをしてきたが、どれだけ聴いても、私にとっての一番は、この盤。モーツァルトの魂のようなものを感じる演奏です。死ぬ１か月以内には必ず聞きたい、そんな一枚。 ・輸入盤 ・パソコンにダビングしたのみの１回きりの使用ですが、プラケースに軽いすりが見られるので、「目立った傷や汚れなし」にしています。