人はどこまで速く泳げるのか (岩波科学ライブラリー 89) 単行本 – 2002/7/22
高木 英樹 (著)
人はなぜ泳ぎ、どこまで速く泳げるのか?その疑問にお答えします。 年々歳々更新される水泳の世界記録の変遷を見るとき、誰もが素朴な疑問を浮かべるだろう。「ヒトはどこまで速く泳げるようになるのか」と。進化の過程を経て、陸上での直立二足歩行に適応してきたヒトは、決して泳ぐのに適した体型をしているとは思えない。にもかかわらず、ヒトの泳ぎは確実に進歩している。いったいこの先どこまで進化するのだろうか。
本書は、その疑問に答えるべく、ヒトの泳ぎを過去、現在、未来と時間を縦糸に、そして人類学的、生理学的、流体力学的視点を横糸にして、多角的に解説することを試みた。「ヒトはなぜ泳ぐのか」、「泳ぐことのメリットは」、「楽に速く泳ぐコツは」。これらの問いに対して、実験データ等をもとに、できる限り分かりやすく説明をしたつもりである。
この本は、四方を囲む海とあまたの湖沼河川に恵まれ、総じて泳ぐのが得意な民族と言えよう。独自に発達した日本泳法はその証であり、かつては水泳王国とも呼ばれた。この「泳ぐ」運動文化を大切にしてきたわれわれが、泳ぐことの本質を理解し、さらに発展させるために本書が少しでもお役に立てれば幸いである。