防人の詩 比島編 悲運の京都兵団証言録 昭和51年 京都新聞社
これが戦場の実相だ!
昭和十六年晩秋の歓呼なき出陣から比島上陸、マニラ占領、バターン進攻、 コレヒドール要塞攻略に至るまで、未踏の密林に、 海辺に死闘を展開した第十六師団各部隊、 最前線兵士の姿を克明にえがく。
執筆 久津間 保治
マリベレスへの道
昼なお暗き密林も
行く手にそそる断崖も
砲身、肩によじ登る
此所ぞ、名に負うナチブ山
糧秣切れて日も五日
聞きしバナナよ 今何処
パパイヤの影も更になし
水筒振れども 水も無し
数次にわたる突撃の
苦闘も遂に成らず
草むす屍永えに
恨みとどむる カポット台
デング、マラリア猩紅し
苦しむ熱も四十度
あらぬ言葉をくちばしり
うわごと聞くも哀れなり
苦節報われ五ヶ月の
悪戦苦闘、功成りて
今ぞ砂塵を進みゆく
ああ、感激のマリベレス
バターンの山、霊あらば
一木一草、ことごとく
彼我勇猛将士らの
誉れを永遠に語れかし
(第十六師団将兵愛唱歌より
経年による紙の変色がございます。写真ご参照ください。
古本ですができるだけ綺麗にしてお届けいたします。
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