本編140分、特典映像30分。
特典映像のドキュメンタリーで、今村昌平が本作品の解釈を述べていますが、それが中々、興味深いです。
「復讐するは我にあり」とは、キリストの言葉で、「復讐は、私がやってあげるから、人間は愛と赦しのみで生きなさい」との事だそうです。
本作品の家族はクリスチャンで「右の頬を出されたら左の頬を出せ」と言われるように、父親が官憲の言いなりになる姿に疑問を感じ、自分は好きに生きようとして、道を踏み外す所から物語が始まります。
浜松の貸席旅館の、殺人で監獄に入って出てきた大女将から「お前のイライラの原因は、本当に憎んでいる人を殺せないでいる所に有るんじや無いか」と言われます。つまり、どうでもいい人ばかりを殺していると突かれます。
今村昌平は、宗教は結局、何の助けにもならないんだと解釈しています。その辺で葛藤、翻弄する家族の顛末を描こうとしている作品です。
兎に角、出演している役者と監督が上手いので、2時間以上の作品を飽きさせずに一気に見れます。
今作は、黒澤明ともコンペで競って今村昌平が勝ち取った企画だそうで、本作品を作るまでの10年間は映画を撮ってなかったとの事。
どうも今村昌平監督は役者に辟易したらしく、もうドキュメンタリーしか撮らないと決めていた所、男女の絡みのシーンなどが殊の外、良かったので役者を再評価して自分の誤りを認め、本作品で映画に復活した記念すべき作品です。
そのためか、本作品でも、緒形拳と倍賞美津子、小川真由美、三國連太郎と倍賞美津子との濡れ場シーンは見応えが有ります。演技が上手い人が演じると、こうなるんだと、感心しました。
三國連太郎が倍賞美津子との温泉での絡みシーンでは、熱が入り過ぎて指が入ってしまったと巷間で噂の有名なシーンが有りますが、真偽の程は、ご自分でご確認下さい。
ちなみに当時、倍賞美津子は33歳と女盛りで、まだアントニオ猪木との結婚中の作品です。
■全国で詐欺、窃盗を重ねた上に5人を殺害した昭和の大悪人・西口彰をモデルに描く実録映画。
■佐木隆三の直木賞受賞作品が原作
■第3回日本アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・助演女優賞、キネマ旬報賞作品賞・脚本賞・助演男優賞・助演女優賞、毎日映画コンクール優秀賞・脚本賞・監督賞、ブルーリボン賞作品賞・助演男優賞・助演女優賞ほか当時の映画賞を総ナメ!