タイガーテイルズ 『ビザーク』
87年作、イギリス初とも言ってもおかしくないヘア・メタルの申し子としてデビューしたタイガーテイルズのセカンド・アルバム。
ほぼ同期と言えるPOISONへの英国からの回答とも言われたわけですが、そのキラキラのヴィジュアルと妖しさ満点の猥雑なサウンドはまさにLAメタル全盛期を象徴していたと思います。
前作の「Young And Crazy」シンデレラ+モトリー+ポイズンを彷彿させる外見、80年代メタルの甘いエキスを十分に吸い込んだサウンドは、イギリスでは辛口の評価で終わった様ですが、本作はUKチャートでスマッシュ・ヒットを記録しています。
確かに大化けした印象が強いのですが、まずはヴォーカリストの交代が大きかったと思われます。
前任のスティーヴィ・ジェイムズは、軽さとラフさが特徴の独特のダミ声でしたが、本作から参加したキム・フッカーはより金属的なシャウトの持ち主で、バンド全体がメタリックに生まれ変わる事に貢献しています。
POISON程ポップではないのですが、英国の大先輩であるSLADEやSWEETを思わせるグラム調のメロディ、コーラスを軸に、N.W.O.B.H.M.直系のリフがかなり目立つようになり、印象的には80年代の真っ当なメタル・バンドとなった感もあります。
イギリスでは本格的なグラム・メタルとして受け入れられたのでしょうか、いずれにしても混迷していくブリティッシュ・メタル・シーンの中では明らかに異彩を放っていた事が目を惹いたのは間違いないと思われます。
アメリカや日本では大ブレイクには至りませんでしたが、アルバム全体はB級バンドで終わらせるにはあまりにももったいないキラメキを持っていたと思います。
89年にヒットしたWARRANTのパワー・バラード、「HEAVEN」同タイトルとなった本作唯一となるバラード曲では、英国特有の湿り気を感じさせながら伝統的なブリティッシュ・ポップのセンスも垣間見せる等、バンドの底力も再評価されてもいいのではと思えてしまいます。
70年代ハード・ロック・ファンにとっては懐かしい名前となる、元URIAH HEEPのピーター・ゴールビーも、コーラスで参加しているのもユニークな点と言えるでしょう。