谷山浩子6枚目のオリジナル・アルバム。この時期の谷山さんはスランプ中だったのだとか。その心境は「ピエレット」に顕著に現れている。そんな彼女の闇夜の星は、大島弓子の人気漫画「綿の国星」だったのだそう。このアルバムの1~5(レコードだとA面)までの曲は、大島弓子の絵本「昼の夢 夜の夢」からヒントを得て作られた。アルバムの最後に収められているタイトル曲「ここは春の国」は、彼女がレギュラーを務めていたラジオ番組「ギャルギャル神戸」(ラジオ関西)の番組内で歌詞を公募し、曲をつけたもの。タイトルからは想像もつかない暗い曲で、優しく語りかけるように歌われる歌声は、どこか子守唄のようで、時を止めてしまいそうな魅力をもつ。途中の台詞が聴きどころで、妙な暗さがアガる(笑)。キャリアの中では、それほど目立ったアルバムではないが、メルヘンと黒谷山が顔をもたげた世界観が、一部のファンにはたまらない1枚。