三宅雪嶺の政治思想 : 「真善美」の行方 ミネルヴァ書房　2012

「三宅雪嶺の政治思想 : 「真善美」の行方」 長妻 三佐雄 「国粋保存主義」を提唱した政教社の言論人・三宅雪嶺の思想の核心は、「国粋保存」よりも「真善美」にあった。「個人」は天賦の才を伸ばして「真善美」に貢献し、各国は各々の「真善美」を実現して、人類社会は進歩していく。だが個人と国家、各国家間、国家と人類の間での軋轢には予定調和的で、そのぶん時事論で矛盾した叙述も残している。本書では、雪嶺の思想と時事的発言の関連に踏み込み、その政治思想を解明する。 はしがき——雪嶺哲学の魅力 　第Ⅰ部　多様性の思想 第１章　多様性がつむぎだす個性——三宅雪嶺の思想 　１ 雪嶺と読書 　２ 「漢字廃止論」をめぐって 　３ 多様性と交通 第２章　優勝劣敗か、相互扶助か——有機体的共同性と「個」 　１ 「欧化」と「国粋」 　２ 『東洋学芸雑誌』と進化論 　３ 三宅雪嶺の「身体」論 　４ 「人皆天才」 第３章　有機体論と秩序意識の基底——雪嶺と如是閑 　１ 共同性への憧憬 　２ 三宅雪嶺と有機体的共同性——「生存欲」と「共同性」 　３ 生成される共同性をめぐる相克 　４ 雪嶺と如是閑 　第Ⅱ部　公益／私益 第４章　雪嶺と露伴——「公益」と「私益」の一致と分裂 　１ 「公益」と「私益」 　２ 『実業之世界』をめぐる人びと 　３ 三宅雪嶺の『世の中』・『続世の中』 　４ 雪嶺と露伴の相違 第５章　所与としての「職分」 　１ 「官尊民卑」に抗して 　２ 福澤諭吉と「町人根性」 　３ 三宅雪嶺と商業の精神 　４ 「職分」と「人皆天才」 　第Ⅲ部　ナショナリズムと「真善美」 第６章　「国粋」と「真善美」——「英雄」としての西郷隆盛 　１ 錯綜する西郷評価 　２ 「第二維新」と「英雄論」 　３ 「革命家」としての西郷隆盛 　４ 「革命家」のエートス 第７章　ナショナリズムと「真善美」の狭間で——中国認識を中心に 　１ 「護国」と「博愛」 　２ 三宅雪嶺と「国粋主義」『明治思想小史』を手がかりに 　３ 三宅雪嶺の中国認識 第８章　共同性の再生に関する一考察 　１ 共同性への憧憬 　２ 生成する共同性 　３ 雪嶺研究と共同性について 補　論　記録でもなく、征服でもなく——近代日本における「登山」観 註 三宅雪嶺研究案内 参考文献 あとがき 人名・事項索引