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水上勉 「越前竹人形」 初版本・昭和38年・中央公論社・函・帯

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「・・・作者がそれを意識してゐたかどうかは分らないが、何か古典を讃んだやうな後味が残る。筋に少しの無理がなく自然に運ばれてゐるのもいゝ。玉枝を竹の精に喩へてあるせゐか、何の閥係もない竹取物語の世界までが連想に浮んで来るのである。(後略)」 これは昭和38年9月12日の「毎日新聞」夕刊に「越前竹人形を讀む」という谷崎潤一郎の記事です。 これを知った水上は「私は、十二日の夕刊をみて、毎日新聞の本社を訪ねて、浜田琉司さんから、先生のお原稿をみせて頂いた。眼頭があつくなった。先生は、題字を自書され、本文は口述されて細かに筆記させられたらしく、その誰かの字を、ところどころていねいに消し改めたり、書き足したりしておられた。先生の字は、心もちふるえていた。インキの色がそこだけ変っている。その色が私の眼に沁みた。十二日、十三日、十四日分と三回を全部通読する機会をあたえられたのだが、浜田さんの前でわけもなく私はふるえてしまった。(後略)」水上勉「谷崎潤一郎先生のこと」より また谷崎潤一郎は著書「雪後庵夜話」のなかで、「・・この作品にでてくる古風な京都弁が、自作の「夢の浮橋」に書いた京都弁とそっくりなだけではなく、いろいろな点で「夢の浮橋」を思い出させる。(中略)だが、まあ、何のかのと言うものの、私は近頃これほど深い興味を以て読み終わったものはなかった。めったに若い人の作品を読んだことのない私であるから、知った風なことを言えないけれども、かつて深沢七郎君の「楢山節考」を飛んで以来の感激である。(後略)」と述べて絶賛しています。 中央公論社・昭和38年7月初版発行の水上勉「越前竹人形」函・帯付きです。帯の背にヤケと小スレがありますが、本体は経年の割にはヤケは少なく、シミや書込みなどはありません。この作品は翌39年に改訂版がでており(函のタイトル題字が左になっています)。また昭和47年に新装版、普及版も出ておりますが、出品本は昭和38年7月の元初版本です。 58年前の古書であることをご理解の上、購入の検討をお願い致します。
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