生前の吉本とも交流のあった著者が、吉本隆明の住んだ場所をキーワードにして、その生と思想の痕跡を辿っていくという、他に類書のない一冊。吉本論という側面と、昭和の生活史という側面を合わせ持った労作です。巻末には吉本の生活史を彩る項目を辞書風に解説した「補註」も付いていて、使い勝手もいい本かと思います。2005年の初版です。
余談ですが、言われてみると、吉本ほど、自分の「生活」と思想が重なり合っていた思想家も珍しいかもしれません。それは、例えば柄谷行人の書くものに、全く彼の生活を窺わせる匂いがないのとは対照的な事態です。そういう吉本だからこういう本が成り立つのかと、ちょっと読者としては不意を打たれるような感じもあります(その後の書き手で言うと、若干、四方田犬彦がそのような匂いを受け継いでいるかと個人的には思います)。
新品に近い状態で保管されていた一冊で、帯もそのままです。裏表紙にスレ跡がありますが、それ以外は、特に目立つ汚れや傷や書き込みなどない美品です。写真でご確認ください。
#吉本隆明