明治の代表的陶商である初代田代市郎次は、実兄の松村九助と協力して、尾張陶磁器即ち瀬戸焼・美濃焼の輸出振興を図りました。名古屋の松村九助が瀬戸の名工として名高い還情園こと六代加藤紋右衛門に染付の素地の制作を委託し、田代市郎次(横浜田代商店)が横浜で上絵を施して、欧米に輸出したのが、本作染錦花鳥図大鉢です。
紋右衛門は、尾張瀬戸の陶家。代々紋右衛門を襲名。家祖は初名円六、二代紋右衛門が1785年(天明五)継業。明治3年に五代目の甥が六代目加藤紋右衛門を襲名。「還情園」「池紋」と号しました。1876(明治9)年に米国フィラデルフィアで開催された万国博覧会には、瀬戸からは川本桝吉・加藤五助・加藤繁十・加藤周兵衛と共に加藤紋右衛門も多くの優品を出品し、欧米の美術館がその殆どを買上げ、収蔵品としています。
加藤紋右衛門の同手の花瓶もありますが、当然ながら胴部外側だけの絵付けです。それに比べて、本作の大鉢では胴部外側と見込みの両方に同等の絵付けが丁寧に描き込まれています。花瓶の絵付けの倍の手間と時間がかけられているということになります。染付と上絵のバランスが絶妙です。
寸法は直径が46cm、高さが20cmの非常に大きな作品です。この大きさからみて、当時の欧米の博覧会などに出品されたものと推測されます。
伝世品ですので、金彩のかすれなどはありますが、写真でお分かり頂けますように非常に綺麗な保存状態です。ワレ、カケ、ヒビなどの瑕疵はありません。
加藤紋右衛門のこれほど大きな鉢は見たことがありません。瀬戸の美術館などにも同手の鉢はないと思います。
尚、私の出品写真と説明文をそのまま盗用して、格安で販売しますという詐欺サイトが最近いくつかあるようです。呉々も騙されないようにご注意下さいませ。私が個人サイトに平行出品していると勘違いされたことがありますが、私はオークションサイト以外には出品しておりません。
種類···磁器
種類···鉢
種類···大鉢
焼き物···瀬戸焼