「「NPO」幻想と現実 それは本当に人々を幸福にしているのだろうか?」
田中弥生
NPOは利益を追わないから善である。そんな「幻想」に疑問を投げかけ,経営の視点からNPOを問い直す
「人々の善意や正義感で成り立っているNPO(非営利組織)は本当に役立っているのか。自分たちが一生懸命活動することで,相手が迷惑をこうむっているかもしれないことに思いは及ばないのか」。本の冒頭で筆者が投げかける疑問に対し,心の中で拍手喝さいする企業人は少なくないだろう。
営利団体である企業や政府の手が及ばない「外部経済」をすくい上げる手段として,NPOは欠かせない存在である。そこまでは理解できたとしても,NPOに共通する一種の独善性や効率の低さを「胡散臭い」と感じるのは,決して少数派ではあるまい。さまざまな問題点を抱えながら,資本主義が唯一の経済構造として生き残ってきたのは,資源の再配分機能として,資本主義を超えるシステムが見当たらないからである。だとすれば,資本主義を無視したNPOなどあり得ない。経営やコストの視点を取り入れた本書のNPO分析は,企業人にも受け入れやすい一冊だ。 (ブックレビュー社)
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