1989年の作品。
彼らは、1979年に米国ミネソタ州ミネアポリスで結成されたパンク・ロック・バンドで、レコード・デビューも1981年と、所謂パンク・ロック全盛期から外れた遅い登場となりました。
この彼らを取り巻く環境と、リーダーであるポール・ウェスターバーグの文学的な感性が、このバンドのサウンドに独特の陰影を与えています。
それは、結果的に彼らが時代の流れから少し遅れてしまった、離れてしまったが故に、他のバンドでは得られなかった視点-より円熟し、ときには冷めた皮肉混じりに、それでも遅れてきたパンク・ロック・スタイルそのままにノイジーなシャウトをせざるを得なかったことに、自覚的な部分が感じられます。
オープニングの『タレント・ショウ』は、ショー・ビジネスに対する皮肉と、そこから離れることはできないという悟りのような歌詞が、軽快なロックンロールに乗ってきます。
これは"どこだってここよりはマシさ!"と投げやりなパンク・ロック・スタイルの『エニホエアズ・ベター』で吐き出されるシャウトと一見対照的でありながら、自分たちの立ち位置に自覚的という意味では、同様の繊細な感性を感じます。
『インヘリット・ジ・アース』でも、"我々は地球を受け継ぐんだ"とメッセージを放ちながらも、アルバム・タイトルにもなっているフレーズ"Don't Tell a Soul(誰にも言うなよ)"を付け加えずにはいられない、そんなメッセージの力強さと控えめさの狭間で、自分たちのロックを生み出そうとする姿勢を感じます。
そして、今作のハイライトは『ロックンロール・ゴースト』。
かつてパンク黎明期に、セックス・ピストルズのジョニー・ロットンは「ロックは死んだ」と発言しました。
しかしウェスターバーグは、"死んだ"あとの"亡霊(Ghost)"の地点から、音楽を始めようと宣言しているのです。
暗くて静かな曲調は、死んだロックの安息を願うとともに、その復活を宣言しているのです。
この曲だけでも、彼の非凡な才能がわかります。
日本盤のため、ライナーノーツ・英詞・対訳、すべて揃っています。帯はありません。
経年により、白い紙の部分に黄ばみがありますが、それ以外は美品です。