松沢 哲郎
おかあさんになったアイ―チンパンジーの親子と文化 (講談社学術文庫)
「進化の隣人」たちの親子関係、教育、文化漢字や数字を理解するアイが息子アユムを産んで6年。“彼女”が修得した知識や技能は、次の世代へどのように伝承されるのか。野生化での研究をも踏まえて探る。
講談社 (2006/10/11)
発売日 2006/10/11
言語 日本語
文庫 288ページ
ISBN-10 4061597868
ISBN-13 978-4061597860
京都大学霊長類研究所(愛知県犬山市)に、「アイ」という名前の25歳になるチンパンジーがいます。アイは、ことばをおぼえたチンパンジーとして有名です。たとえば、赤色の四角形と色を表す10個の漢字を見せると、アイは「赤」という字を選びます。また、0から9までのアラビア数字を使って、物の数を答えたりすることもできます。
そのアイが、2000年4月24日に男の子を産んで、おかあさんになりました。子どもの名前は「アユム」。霊長類研究所では、同じ年の6月と8月にもクレオとパルという女の子が生まれ、3人のあかちゃんが元気に成長しています。
本書では、アイと20年以上にわたって研究を続けてきた著者が、アユム誕生から1年間のアイたちの子育てのようすを紹介します。これまでにアイたちが習いおぼえてきた知識は、どのように子どもたちに伝えられていくのでしょうか? アフリカの野生チンパンジーの暮らしとも照らし合わせながら、わたしたち人間のごく近い親戚といえるチンパンジーの親子関係や教育などについて語ります。
松沢哲郎(まつざわ・てつろう)Tetsuro Matsuzawa
1950年愛媛県生まれ。1974年京都大学文学部哲学科卒業。現在、京都大学霊長類研究所(思考言語分野)教授。理学博士。1978年からチンパンジーにことばを教える「アイ・プロジェクト」をはじめる。1986年からはアフリカの野生チンパンジーの調査も続けている。主な著書に『ことばをおぼえたチンパンジー』(福音館書店)、『チンパンジーから見た世界』(東京大学出版会)、『チンパンジーの心』『チンパンジーはちんぱんじん』(以上、岩波書店)がある。