1998年。フレンチ・カリブの名作。 本盤はラルフ・タマールによるジェラール・ラ・ヴィニの作品集。 タイトルの“LA MARSEILLAISE NOIRE”とは「黒人のラ・マルセイエーズ」という意味。奴隷解放を求めるフランス領カリブの人々、アフリカ系黒人や混血のクレオール達によって古くから歌われてきた曲である。 本作は、それから、150年後の1998年、奴隷解放150周年記念として企画されたものである。 ジェラール・ラ・ウ゛ィニーは1950年代後半からビギン、マズルカ、といった故郷の音楽をレパートリーといした楽団を率い長きに渡ってフランスで活動してきたベテラン歌手。 そんなジェラールのレパートリーに見合う歌手として抜擢されたのがラルフ・タマールである。 ラルフ・マタールは生まれ育ったマルチニークで60年代から歌手として活動を始め、ビギン、マズルカ、カダンス、そしてキューバやプエルト・リコのラテン音楽などを歌い、70年代にはマラウ゛ォワに参加した。 マラウ゛ォワといえば、日本の音楽ファンでもお馴染で、マルチニーク島などカリブ音楽のルーツをモダンな形に表現した今なを活動する有名なグループである。 そのマラウ゛ォワを抜けた後もズークの手法も取り入れながら、独自のフレンチ・カリブ音楽を演じ続けてきた。 このアルバムの3曲目:“Les Prenoms Des Filles”は日本でもジェラールの曲が随分前にCM(サントリー)に起用され流れたことがあったので覚えている方も多いと思う。 伊藤裕子が出ていたやつである。 60年代を彩ったジェラールのシャンソン・クレオールの優美さを彷彿させてくれる。 そんなジェラール・ラ・ウ゛ィニーとラルフ・マタールをバック・アップするミュージシャン達も、フレンチ・カリブのベテラン、腕達者ばかりだが、加えてサルサの世界で有名なウ゛ァイオリン奏者のアルフレード・デ・ラ・フェや、カメルーン出身、アフロ・ポップ・シーンのゴッド・ファーザー、マヌ・ディバンゴが参加している。 |