【フランツ・リスト】
1.ため息(3つの演奏会用練習曲 第3番)/
2.ラ・カンパネラ(パガニーニによる大練習曲 第3番)/
3.小鳥に説教するアッシジの聖フランシス(2つの伝説 第1曲)/
4.愛の夢 第3番/
5.泉のほとりで(巡礼の年 第1年「スイス」第4曲)/
6.ます(シューベルト歌曲 トランスクリプション)/
7.いずこへ(シューベルト歌曲 トランスクリプション)/
8.乙女の願い(ショパン歌曲 トランスクリプション)/
9.ハンガリー狂詩曲 第2番
歴史に裂かれた父子。フジコのピアノが幕を開ける。
父はスウェーデン人建築家、母は日本人ピアニスト。イングリット・フジコ・ヘミングはベルリンで生まれた。
フジコ5歳の頃、一家はナチスの台頭しつつあるドイツから日本へ移る。
だが日本になじめず、母と争いの絶えない日々…
1年もたたずに父は日本を去った。
時を同じくフジコのピアノが始まった。母によるスパ
ルタ式の厳しいレッスン。やがて「天才少女」フジコ
の才能が開花していく―。
苦難の道をたどるフジコに、ついにチャンスが訪れる。
だが、フジコの道は決して平坦ではなかった。
終戦直後に失った右耳の聴力。評価されない演奏。
国籍を抹消され「難民」として渡ったドイツでの、貧しく孤独な留学生活。
たくさんの恋もしたが、そのどれもが報われなかった。
苦しみと共に深みを増すフジコのピアノに、ついにチャンスが訪れる。
世界的指揮者に認められ、ウィーンでのリサイタルが決定したのだ。
フジコを襲った悲劇 光は目の前で消えた
リサイタルを1週間後に控えた極寒の日、フジコを高熱が
襲った。医者にかかる金もなく、ただ眠り続けた。
フジコは目を覚ました。枕元の鈴が落ちた。
世界は無音だった。
聴力を失ったピアニスト――
フジコは人生最大のチャンスをも失った。
居場所を求め彷徨う日々。母との確執、そして別れ。
絶望のうちに渡った父の国で、左耳の聴力の約半分を取り戻す。
音楽教師として生きていこうと決めた。父を訪ねもした。だが、父は会うことを拒否した。
日本へ里帰りしたフジコに、母は「あなたの活躍する場はここにはない」と言い放った。
フジコは再びドイツへ戻る。猫や犬に囲まれて、気ままにピアノを弾き、静かに過ぎていく毎日。
ある日、病院の母から電話があった。1週間後、母は亡くなった。
「どうして帰らなかったのか―」フジコは悔やんだ。母の死から2年後、フジコは日本へ戻った。
悲劇から栄光へ―フジコのピアノが奇蹟を起こす。
奇蹟は突然訪れた。1999年、フジコの半生を描いた番組が放送される。その音色は、多くの人の心を瞬く間にとらえた。
同年発売のアルバムは異例の大ヒット。
リサイタルも大成功し、その後の演奏会の
チケットはいつも完売状態。
激動の人生が奏でる音楽は、フジコ・ヘミングそのものだ。
"魂のピアニスト"の物語は今日も続いている。