厳密に申し上げますとリマスター仕様ではございません。CD用のマスターテープの音質精度を高めたものの模様でございます。
リマスターとなりますとCDの特徴に合わせて音を調節・強調する感がございます。
解像度が増すものの音の輪郭が角ばったり、鋭すぎる音造りになる事があり、賛否両論に分かれるものもございます。
(オーディオ機器によっては耳に痛いものとなる事も..........................)
されど、ここでは古いものではございますが非常に良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは黄金のツインリード・ギターコンビ含む全盛期名手揃い。
Andy Powell(G、Vo)、Ted Turner(G、Vo)、Martin Turner(B、Vo)、Steve Upton(Ds)となります。
1973年6月イギリス・ツアー、クロイドン・フェアフィールドホール、レディング大学講堂、ニューキャッスル・シティーホール、
ポーツマス・ギルドホールでの実況録音からの抜粋となります。
(ライヴ収録で良く知られた会場の感がございます)
プロデューサーはバンド自身。
制作エンジニアはKeith Harwoodとなります(中期Led Zeppelinのエンジニアとして知られ、David BowieやThe Rolling Stones等を手掛ける)。
かの”The Rolling Stones Mobile”での実況録音制作。
(後にIron Maidenのライヴ大傑作「Live After Death」でも使用機材に精通している事もあり、Keith Harwood起用の感)
空間を生かし余計なオーヴァーダビングを控えたライヴ感のあるスタジオ作での音造りを基にしている感があり、
音響的にも非常に優れた録音となっております。
後に登場するThin Lizzy/Judas Priest/Iron Maiden等々に代表されるツインリード・ギターバンドのルーツとして知られるBritish Rock Bandバンドでございます。
ブリティッシュ・ブルーズ/ロック系に絡む音楽性ではございますが、ブリティッシュ・フォーク系のメロディアスさが強い事がミソでございます。
British Rock特有のルーツ音楽解釈やアマチュア感覚が伴う音楽性でもございますが、
HR/HMでもProgressive Rockでもない当時独特の未分化時代ロック音楽の興味深さがございます。
古今東西分け隔てなくライヴ盤はそもそもスタジオ作の再現+αが求められる事。
更にライヴ会場は(今程ではございませんが)集団ヒステリー状態という独特の雰囲気でございます。
その中で如何にあの状況を再現するか?そして作品としての有り方は?という難題がございます。
時代が時代、そして音楽性が音楽性だけに正に”聴衆”相手の演奏・アンサンブル。そこがバンド側に「吉」と出た感がございます。
”モノ語らぬ聴衆”相手だけに緊張感ある非常に纏まった演奏・アンサンブルとなっております(特に”巡礼”)。
ライヴならではのアレンジもあり非常に興味深いものともなっております。
ツインリード・ギターの有り方が一番の興味となりますが..............................
(建前上)余計なオーヴァーダビングを加えられないライヴ盤でございますので、コーラスの有り方も非常に興味深いものとなっております。
(聴衆含め)録音状況が興味深く、通常のライヴ盤では聴き取り辛い個所まで聴き取れる事もあり非常に生々しいもの。
オーディオファンに重宝された感がございます。
大傑作「Argus」で一つの到達点に達した事や前作”Wishbone Ash Four”からはアメリカ進出を見据えた事も加味した事もあり、
楽曲によっては音楽性が変化致しておりますが、正に全盛期。
良くぞ残してくれたという感がございます。
ギタリストの相次ぐ脱退(Eric Bell、Gary Moore)に頭を悩ませていたトリオ時代Thin Lizzy。
その頭脳たるPhil Lynottがギタリスト二名を加入させればどちらが抜けても大丈夫であろうとツインリード・ギター構想を思い付いた事は周知の事実。
そのツインリード・ギターを要する音楽性への変貌に関しては、このWishbone Ashをかなり参考にしていた感がございます....................
.............よりメロディを強調したものとなっておりますが.........................
また後々にはEaglesを手掛けるプロデューサーBill SzymczykがWishbone Ashの制作に携わる事となり、
直後に手掛けた”Hotel California”とりわけタイトル曲後半のDon Felder/Joe Walshのツインリード・ギターの有り方の参考にしたのでは?
とも言われます.....................................................................
また後に”Live After Death”という大傑作ライヴ盤を制作する同じく英国のIron Maidenでございます。
プロデューサーがかのMartin Birchという事もあり、Martin Birch自身が制作に携わったDeep Purple”Live In Japan”だけでなく、
(制作を含めて)この作品を参考にしたのでは?との感がございます...............
今作を残しアメリカに拠点を移すものの、名手Ted Turnerが脱退。
これまた名手Laurie Wisefield(ex-Home)を迎えるものの音楽性は質は高いものの迷走気味となっていきます。
正に分岐点的なライヴ盤でございます......................................
また、ボーナストラック曲は名曲”Phoenix”のライヴ。
アメリカ・メンフィスでの実況録音からの抜粋たるミニ・ライヴ盤”Live From Menphis”からのテイクとなります。
現在では入手が非常に困難。この機会に是非。