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麗らかな春の朝、漁を終わって三保の松原に上がった漁夫白龍は、松の枝に美しい衣が掛かっているのを見つけ、持ち帰り家宝にしようと思う。そこへ衣の主である天人が現れ、衣を返すように懇願する。それは天界に戻るために必要な天の羽衣だったのである。白龍は悲しみに暮れる天人の姿に感動し、羽衣を返すことにするが、代わりに天人の舞楽を見たいと望む。羽衣を身に着けた天人は、夕焼けが辺りの山々を染める中、後世に駿河舞として伝えられる天女舞を披露しつつ、天上に帰っていく。白龍登場の場面の謡は、朝としか考えられないのに対し、舞の披露は夕刻である。その間の経過が不明確だが、現実的・写実的なことに作者はあまりこだわっておらず、神秘的・空想的な物語に仕上がっている。室町後期以降、頻繁に上演される人気曲である。細かい心理描写や、登上人物同士の深刻な対立はない。わかりやすく美しい歌舞によって、素直に能が展開する。
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