鼓直/清水憲男/篠沢真理 訳
発行日 1989年7月20日
< 帯より >
<時> の 迷宮 <夢> の 書 物
夢、記憶、宿命ー謎めいた暗喩によって
言葉の錬金術師ボルヘスが
紡ぎだす神秘と幻想の世界
失われた太古の魔力を喚び戻す
恐るべき美をたたえた晩年の詩集2冊を収録。
<カバーより>
百年の秋がめぐる間 私は
お前の淡い円板を眺めていた
百年の秋がめぐる間 私は
島々に懸かるお前の弓を眺めていた
百年の秋がめぐる間 私の唇は
お前より寡黙であったことはない
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終わりというものを知らない
道を われわれの行動はひたすら進む
シェイクスピアに勝利を
織り上げさせるために
私は王を殺したのだ。
時間を欠いた空間
月は砂の色をしている
今 正しく今
メタウルスとタンネンベルクの
男たちが死んでゆく
無慈悲の星と慈悲深い星
私の生まれた夜の空を総べていた
私はドン・キホーテの夢をみた
あの牢獄は後者のお陰である
目指すゴールは忘却である
早々と到達してしまったようだが
最初の砂漠のことだった
二本の腕が一つの大きな石を投げた
悲鳴はなかった 血があり
初めて死があった
私はもはや
自分がアベルかカインの
いずれだったのか思い出せない
< 感 想 >
◇「時間と川、
生きることと夢みること、
死と眠り、星と目、花と女。
恐らくこれらが、
あらゆる文学に見出される
本質的なメタファーだろうと、
私は思う」
◆忘却、時間、夢など
イメージとメタファーが
繰り返し繰り返し現れる。
個人的には、その反復が
心地よく永遠を感じさせる。
<読書メーターより抜粋>
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
1899年ブエノスアイレスに生まれ。
20世紀を代表する作家の一人。
その幻想的な文学世界は、
日本でも多くの愛読者を持ち、
全作品のほとんどが
翻訳出版されている。
1986年スイスにて死去。
☆発行より
31年経過しておりますが、
新刊本に近い
コンディションです。
末永くご愛用して
頂けましたら幸いです。