リヒテルの芸術•第8巻 ブラームス
<第1面>
ピアノ五重奏曲へ短調•作品34
1.第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ 15:13
2.第2楽章 アンダンテ・ウン・ポコ・アダージョ 9:40
<第2面>
1.第3楽章 スケルツォ・アレグロ・フィナーレ・ポコ・ソステヌート 7:25
2.第4楽章 アレグロ・ノン・トロッポ・プレスト・ノン・トロッポ 10:28
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
ボロディン弦楽四重奏団
第1ヴァイオリン R.ドゥビンスキー
第2ヴァイオリン Ya.アレクサンドロフ
ヴ イオラ D.シェバーリン
チェロ V. ベルリンスキー
いま私がいちばんきいてみたいと思っているピアニストはリヒテルである。だいぶ前からそう熱望しながら、こんにちまでついにどこでも彼の演奏会にめぐり会えなかった。だから彼がどんな演奏家かということはまだ確信をもって言うことはできない。
しかし、レコードできいても、これはたいへんな芸術家だということはわかるし、だからぜひ実演に接してみたいと念願しているのである。リヒテルの演奏はやはり西欧のものではなくて、ロシア的感性のきわめて濃厚な様式であるという説があり、反対に彼はゲルマン系の血をもつ音楽家であるから深いところで、やはり西欧の伝統につながる感じ方を持っているという見方もあるようだ。
私としてはそのいずれも正しいと思う。というといかにも中途半端のようだが、彼にはたしかにロシア人でなければないふといもの、豪壮なものおよび、てんめんとした息の長い抒情などがあるのはもちろんだが、半面きわめて明確な形式感をもち、立派な音楽構築を表現する点ではたしかにドイツ音楽の伝統も波のうちに浸透しているように思われる。更に驚くべきは、そのような頑健な北方的な指が、ドビュッシーの曲などになると精巧なガラス器のような感触さえ表現することである。
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