「いき」の構造　他２篇　九鬼周造

「いき」の構造 他二篇 九鬼 周造 岩波文庫 定価: ￥ 720 #九鬼_周造 #本 #哲学 「いき」という日本人に独自の美意識を明晰周到な方法でえぐり出した九鬼哲学の代表作並びに関連論文２篇。 九鬼周造がヨーロッパにいたのは1921年(大正10年)から1929年(昭和4年)までである。その間、時間の問題について講演したり、フランス語で論文を書いたりした。パリの哲学界では若い俊秀としてみとめられ、とくにハイデッガーには高く評価され、ベルクソンにもみとめられた。無名の実存主義者サルトルのパトロン的役割をはたしたという説もあるが、サルトルが九鬼の家庭教師だったことは少なくともまちがいない。 ヨーロッパの生の哲学、実存主義のなかで育った人であるが、しかし、九鬼周造のあたまのなかでは、時間とか偶然性とかとは別に、ひとつのテーマが熟しつつあった。すなわち、『「いき」の構造』である。それが実って本書となった。 ……… 〈多田道太郎「解説」より〉 ……大正10年渡欧した九鬼は、ヨーロッパ哲学の概念を用いて東洋的日本的思想・文化の相対的独自性を明らかにすることを自身の課題とする。日本が世界の五列強に躍り出たこの時期、西欧絶対視からの転換が起こりはじめることや文化主義的風潮もここには作用していよう。バロン・九鬼はフランスの伝統的洗煉に身をひたす機会が多かっただろう。対応するものとして詩人九鬼が見出したのが花柳界に生き残る「いき」ではなかったか。キリスト教と騎士道に対し、仏教と武士道が呼び出されて当然だった。このあたり荷風と比べても面白い。 〈鈴木貞美：作家・文芸評論家 　　『日本の知の冒険者たち』より〉 美品。新品同様。