●ツェルニー30番について
ツェルニーの練習曲と言うと、何か味気ないもの、唯、指の試練のためにのみ書かれたもの、というふうに思われる傾向があるように思う。しかし、この練習曲は、勿論、基礎的なメカニズムの試練ということが根本に置かれているわけだが、一曲一曲の目的が明確であるし、和声や曲の構造が、分り易く作られている。ショパンのエチュードのように、深い内面性や詩的情緒をもつ、という種類のものではないにせよ、ピアノを弾くということの喜びを与えてくれる、魅力のある曲が多い。強いてあげられる欠点と言えば、長調、特にC-Durの曲が多いということや、対位法の技法で書かれているものがない、ということなどだと思うが、そういう面は、他の方法で補うことが出来るものと考える。(移調してさらったり、バッハの曲などを併用して勉強すればよいだろう)
より高度なテクニックを得るための基礎練習として、曲のもつ目的をはっきりと認識し、弾く時の姿勢、手首の柔軟さ、各指の独立、敏捷さ、正確さ、音の出し方、リズム、テンポ、旋律の歌い方、音楽を再現するということの意味、耳の訓練など、一步一歩積み重ねてゆく勉強が大切である。
<レコードの演奏におけるテンポの設定については、30番、40番を通じて、多少自由に考えさせてもらったものもある。又、ペダルの使用もエチュードだから用いてはならないということはないと思うし、その使い方も、先生の方で注意深く教えてゆけば良 いだろう。>
楽しんで聴いていただける商品です。ジャケットに歴史を感じさせるそれなりの痛みはあります。