TPは、サックスやクラリネットと比べて、その楽器の構造からくる演奏性の制約から、カルテット作品 の完成度を充実させることが非常に難しい。それぞれの時代の名手がそれぞれに挑んで作品を 残しているが、残念ながらその完成度のどこかにある種の「すきま」を感じてしまう。ところが、 本作品は同楽器によるワンホーンカルテットでの史上唯一の成功作品と言っても過言ではない。 それは演奏者の類まれな技量に基づくのは言うまでもなく、それをスポーツでたとえるならば、 オリンピックの十種競技をそれぞれの競技の専門家以上の記録でこなすプレイヤーとでも言えば 足りるであろうか。それは、すべての競技をこなしてさらに余裕のある能力を備えていると言うことで あるが、しかし、類まれな技量をもっていることが逆にあだになることもある。その良い例が本作品で あるというのは不遜であろうか?どの演奏を聴いても、そこには余裕を見て取れる。発音、フレージング 、音程、演奏効果の調整・・・すべてが完璧に制御され、素晴らしい。しかし、なにかが足りない。たとえば 、「Brown~Roach Quntete at BASIN STREET」では、マックスローチが興奮のあまり、テンポを忘れて 走り出すなどという失態を繰り広げているが、聞き手は思わずうなずいてしまう。感情さえもが非常に 計算されて制御されている本作品には、そのような人間臭さがない。伝わってくる熱気もいわば「計算された 」熱気であるように聴こえてくる。「洗練されている」で片づけるのも一つではあるが、非の打ち所が 無い完璧さの持つ悲しさのようなものを感じてしまう。非常に模範となる演奏と言う点でお勧めです。
1 Caravan
2 April In Paris
3 Cherokee
4 Goodbye
5 New Orleans
6 Soon All Will Know
7 Foggy Day
8 The Song Is You
9 Memories Of You
10 In The Afterglow
11 Autumn Leaves
12 Cherokee