MONO
ベートーヴェン
交響曲第9番二短調作品125「合唱」
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
NBC交響楽団
アイリーン・ファーレル(ソプラノ)
ナン・メリマン(メッゾ・ソプラノ)
ジャン・ピアース(テノール)
ノーマン・スコット(バリトン)
ロバート・ショウ指揮
ロバート・ショウ合唱団
◯トスカニーニの「第9」
このトスカニーニの「第9」は、今日レコードできけるあまた数ある「第9」の中でも、音楽的表情のもっとも厳しい「第9」といえるはずのもので、音楽はギシギシときしみながら、しかし尋常ならざる推進力で進展していく。したがってききては、ききだしたら最後、身じろぎひとつできないまま、全曲をきき通してしまう。しかしだからといって、これをトスカニーニの無理おしの演奏と考えたらちがう。敢えていえば、トスカニーニはここで、非音楽的なことは一切行っていない。これはただ、トスカニーニが作品から読みとったところのものを音にした結果でしかない。ただその音にするにあたってのしかたにいささかの妥協もなく徹底しているがために、表面的にきくと、ひどくリゴリスティックな演奏と誤解されがちだが、むしろきくべきは、ベートーヴェンの「第9」をぎりぎりのところまでおいこんでいった後につかみとったものの重さだろう。余分なみぶりとか、これみよがしな表情は、ここになにもない。
◯初演
1824年5月7日、ウィーンのケルントナートーア劇場。ベートーヴェン自身の総指揮による。 ミハエル・ウムラフとイグナッツ・シュパンチークというふたりの指揮者をおき、ソプラノのヘンリエッタ・ゾンターク、アルトのカロリーネ・ウンガー、テノールのアントン・ハイッチンゲル、バスのザイフェルトといった当時の名歌手たちを独唱者として行われた。初演は、幸い、大成功で、非常な喝采を博したのだが、当時のベートーヴェンはすでに耳がきこえなくなっていて、そのために聴衆の歓声がきこえず、アルトのウンガーにおしえられてやっと、聴衆の熱狂的な反応を知ったといわれている。なお、この時ソプラノ・パートをうたったゾンタークは、オペラの黄金時代に大活躍したプリマドンナだが、この「第9」と「ミサ・ソレムニス」の初演をうたったことが、その成功のきっかけになった。
楽しんで聴いていただける商品です。ジャケットに歴史を感じさせるそれなりの痛みはあります。