キンクス／ワード・オブ・マウス

1984年の作品。 偉大なロック・バンドのひとつであるキンクスは、『ユー・リアリー・ガット・ミー』や『オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト』といった初期のワイルドな＂キンキー・サウンド＂ハード・パワー・ポップのパイオニアとなりながらも、自らの意志、あるいは時代の偶然により、スポットライトの当たらない場所で活動することも多かったのです。 例えば、リード・シンガー・ソングライターのレイ・デイヴィスは、他のバンドがウエスト・コーストのサイケデリック・カルチャーに耽溺するなかで、1968年のアルバム『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』のような、英国文化の特殊性に向き合い、精巧なロック・オペラのレコーディングを行った1970年代には、メインストリームから大きく外れることもありました。 しかし、バンドの努力は1980年代初頭に再び実を結び、エネルギッシュなツアーと、MTVのヘヴィー・ローテーションに乗り、復活を遂げました。 今作は彼らの24枚目のスタジオ・アルバムとなりますが、ファンなら目を奪われるのが＂WORDS &MUSIC BY DAVE DAVIS＂というクレジットがあることでしょう。 実はキンクスのアルバムというのは、レイ・デイヴィスが作詞・作曲・編曲・プロデュースを全て行うというのが普通であり、弟のデイヴ・デイヴィスの名前が記載されることはあり得ないのですが、今作ではクレジットの通り、2曲もデイヴの作品が取り上げられています また、ストレートなギター・ロックに回帰しているのも、ギタリストであるデイヴの影響かもしれません。 因みにこの2人はロック界のなかでも、最も兄弟仲の悪いことで有名で、この辺りの兄弟関係のバランスも外野からはわからないものがあります。 シンセサイザーを効果的に用いた『Do It Again』や、アルバム発表同年に亡くなった英国の女優ダイアナ・ドースに捧げた『Good Day』や、のちにレイ・デイヴィスのソロ・アルバムで再レコーディングされることになる『Going Solo』『Missing Persons』『Sold Me Out』など、佳曲が揃った統一感のあるアルバムです。 西ドイツ輸入盤のため、日本語関係の資料はありません。 経年により白い紙の部分に少しだけ色褪せがありますが、それ以外は美品です。