2017年3月30日 第1刷発行。
かなりショッキングな内容の本です。
『正社員消滅』というタイトルの意味するのは、まず非正規社員の増加により正社員がいなくなってしまうことです。
今や労働者の4割が非正規社員となった時代の趨勢を、具体的にレポートしています。
もうひとつ、実はこっちの方が恐ろしいのですが、非正規社員が増えることにより正社員に過大な責任がかかり、今までのような安定や安心をもたらさなくなった現実を描いています。
かつては後者の方は、所謂"名ばかり店長"のように表向きの肩書とは裏腹に昇給も手当や休暇もなく働かされる存在が問題になりましたが、企業の業績不振の有無に関わらず業務はそのままで、グループ会社の派遣会社の派遣社員に転籍されたりケースも紹介されています。
つまり今や正社員は、無限定に雇用保障があるがゆえに、無限定に働かされ、無限定に追い出される存在になってしまったのです。
現在の労働組合の弱さ、政府が進める労働移動支援助成金の増加、"限定&無限定正社員"や"ホワイトカラーエグゼンプション"や"ジョブ型雇用"など、最近耳にする言葉からすれば、さもありなんという感じがします。
改めて、今の日本が労働生産性を上げるために行おうとしている"働き方改革"というのは、雇用の"流動化"を高めようとはしているが、"定着化"を目指そうとはしていない、人を育てようとはしていないことがわかります。
確かに人的資源を無駄なく使うことは大事ですが、人間は機械の部品ではないのです。
さっきまでAの仕事をしていた人をいきなりBの仕事に移動させたり、全ての仕事が未熟練者にもできるというわけではなく、人はそれぞれ自分の仕事にささやかな誇りと安心を持って働いています。
それを無視していいのでしょうか。
経済全体から見れば合理的に見えても、個々の労働の現場、人間同士の暮らしが交わる場所では必ず軋みが生まれ、その軋みはだんだん大きくなっている、そんな警告が聞こえてきます。
経年によるヨレが少しだけありますが、それ以外は美品です。